どうも、こんにちは。
はりー(@hcinemadowntown)です。
今回は映画『TENET テネット』のレビューです。
新型コロナが世界中を覆い、人々の移動が極端に少なくなりあらゆる娯楽が消滅の危機に瀕している昨今。映画界も雲行き怪しく大作映画が次々と公開延期や配信のみになる中、いち早く劇場での公開にこだわったのは、クリストファー・ノーラン監督でした。
ようやく日本でも公開日を迎えました。全世界興収はすでに10憶ドルを突破していて、文字通り映画界の救世主になって下回った本作。
ノーラン監督のスパイ映画へ愛を煮詰めに煮詰めて、最先端科学のスパイスをぶち込んだら、とんでもない映像革命を巻き起こしてしまった。
コレまで誰も見たことのない超然スパイ映画。「考えるな!感じろ!」
それでは、いきましょう。
本記事は本編のネタバレを含むので、ネタバレ苦手な方はご注意ください。
Contents
あらすじ
あるときウクライナのオペラハウスで爆破テロが勃発。CIAの特殊部隊に所属する主人公(名もなき男)は、人質を救出するために突入したが、仲間の身代わりとなってテロリストに取られられてしまう。仲間の秘密を守るために毒薬を飲んだが、その毒薬は何者かによって鎮静剤とすり替えられていた。
目覚めた名もなき男は、フェイと名乗る男から”あるミッション”を命じられる。それは未来からきた敵と戦い、第三次世界大戦を防ぐこと。そして、合言葉は”TENET テネット”。「その使い方次第で、未来が決まる」。
そして、名もなき男はこれまで想像すらしなかった事態に巻き込まれていくことになる。
スタッフ・キャスト
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
いまやハリウッドで一二を争う売れっ子監督のクリストファー・ノーラン。
『ダークナイト』シリーズや『インセプション』、『インターステラー』など数々のヒット作を生み出している。
ノーラン監督のお得意は時間と空間を操る作劇。
夢の中から他人のアイデアを盗むという斬新な設定の『インセプション』や、遥かな宇宙のかなた時間と空間jを越えた愛の物語を紡いだ『インターステラー』や、陸・海・空の3つのシーンを異なる時間軸で語り、戦場のリアルを再現してみせた『ダンケルク』など、テクニックが多彩。
主人公/名もなき男:ジョン・デヴィッド・ワシントン
(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved
本作の主人公。名もなき男。あるキッカケによって第三次世界大戦を止めるための特殊ミッションに参加することになる。
演じるのは、ジョン・デヴィッド・ワシントン。
スパイク・リー監督作『ブラック・クラウンズマン』で主人公のロン・ストールワースを演じて注目されました。
父親はあのデンゼル・ワシントン。一時期アメフトのプロ選手として活躍していた時期もある異色の経歴。
ニール:ロバート・パティンソン
(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved
主人公と協力して任務をこなす相棒。世界大戦を防ぐため、主人公と世界中を駆け回ることに。
演じるのはロバート・パティンソン。
『ハリーポッターと炎のゴブレット』のセドリック・ディゴリー、『トワイライト』シリーズのエドワード・カレン役で人気ものに。
2021年公開予定の『The Badman』で、バットマンことブルース・ウェインを演じる予定。
キャット:エリザベス・デビッキ
(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved
セイターの妻で一人息子マックスを溺愛している。イギリス貴族の生まれで美術鑑定士という経歴。セイターからは日常的にDVを受けている。
演じたのは、エリザベス・デヴィッキ。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』アイーシャ役、『コードネーム U.N.C.L.E』ヴィクトリア役など。
191cmの超絶スタイル。
セイター:ケネス・ブラナー
(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved
ロシアの新興財閥を率いる。天然ガスで財を成したが、裏の顔は武器商人。未来と過去を繋ぐ重要な謎を握っている人物。
演じたのは、ケネス・ブラナー。
英国を代表する名優。「シェイクスピア俳優」として知られる。出演作は『ハリーポッターと秘密の部屋』ロックハート役や、『オリエント急行殺人事件』ポアロ役など。ノーラン監督作は『ダンケルク』以来2作目。
監督業にも進出しており、『マイティ・ソー』、実写版『シンデレラ』などを手掛けている。『ヘンリー五世』では英国アカデミー賞も獲得している。
予告映像
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『TENET テネット』ネタバレありでレビュー・考察
ノーラン監督がまたまたやってくれました!
ノーラン監督のスパイ映画の愛をこれでもかと詰め込み、そこに”時間の逆行”というこれまたお得意のトンデモSF設定をミックスしまう剛腕ぶり。
またまた、人類が経験したことのないと断言出来るほどとんでもない作品を生み出してくれました。
ノーラン作品ではもはや定番の鳴り止まない荘厳なBGM、古今東西のスパイアクション映画をかき集めてつなぎ合わせたような見せ場の数々、ドライブ感ライド感を楽しめと言わんばかりの高速展開。
ノーラン監督は、我々観客の眼と脳を休ませるつもりは一切なかったようです。
上映時間2時間30分の長尺ながら、瞬きすることすらためらわせる興奮を与えてくれる作品でした。
本作を楽しむためのポイント4つ
本作はその展開の速さ、時間の逆行という視覚的に混乱必死のSF設定のせいか、公開直後から「難解だ!」、「一度みただけでは理解できない」、「いや何度見ても理解できない」と各所から歓喜の悲鳴が上がっていますが、個人的には結構多用な楽しみ方が出来る作品という印象で、必ずしもすべてを理解しなくても十二分に面白い映画だと感じました。
個人的に、『TENET テネット』を楽しむための見方を4つ挙げてみました。
【初級編】純粋にスパイ映画として楽しむ
(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved
クリストファー・ノーラン監督は、大のスパイ映画好きとして有名。特に「007」シリーズの大ファンで常々「007」の監督をさせてくれと公言してはばからないほど。これまでの監督作でも「バットマン・ビギンズ」や「インセプション」などスパイアクション的な作品を手掛けて来ました。
そんなスパイ映画愛溢れるノーラン監督が、正面きってスパイ映画取るぞーと思って作ったのが、本作。
人物設定からしてベタベタですよね。特殊部隊に所属する主人公が、謎の組織から指令を受ける。陰謀を裏で糸を引いていたのは武器商人。囚われの美女。重要アイテムを入手するための潜入ミッション。敵の基地でのラストバトル。
アクションシーンも、深夜の潜入ミッション、カーチェイス、逃走劇と、ベタ過ぎるほどの展開の数々。
しかも、普通の映画ならあるはずの作戦シーンや準備シーンを極端に少なくしているので、終始見せ場。”どうだスパイ映画は最高だろ”と監督の声が聞こえてきそうな作りになってます。
【初級編】驚異の映像美にどっぷり浸かる
本作最大の特徴と言えば、”時間の逆行”。
中盤に登場する逆行世界へ突入する装置”ターンスタイル”によって主人公は逆行する時間軸へと入り込むことになります。
視覚的な目くばせとして、順行世界を赤色、逆行世界を青色で表現してくれているものの、初見で状況のすべてを理解するのはほぼ不可能。
キャスト陣も、完成品を見るまであんまり内容を理解していなかったとぼやいているほどなのでw
画面中に順行するものと逆行するものが入り乱れる映像は驚愕の一言。間違いなく脳みそがバグるはず。
時間の逆転というアイデアはB級SFなんかを探せばアイデア自体は見つかりそうなものですが、それをハリウッドのビックバジェットの一大プロジェクトとしてやってのけてしまうのがノーラン監督の凄まじいところであり、頭おかしいところ。
脳にこびりついて離れなくなるに違いない脅威の映像美を楽しみましょう!「考えるな!感じろ!」
【中級編】時空を超えたバディ物を噛み締める
(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved
本作は過去のノーラン監督作では、そこまで強く打ち出されていなかったバディ物としての側面もあります。
主人公の名もなき男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)とその相棒ニール(ロバート・パティンソン)。
日常の会話パートが少ないので、初見だとバディ物としては薄味かなと感じると思いますが、最終盤ミッションが終わろうとするときニールが赤い紐飾りの持ち主であることが明かされたことでその印象が180度かわるはずです。。ニールは未来の名もなき男から、現在の名もなき男を助けるという使命を受けて、現在時点よりさらに未来の地点から逆行してきた人物でした。
ニールが赤い紐飾りの人物ということは、冒頭のオペラハウスで名もなき男を救った人物も?ラストに鍵を開けるため自らを犠牲にした人物も?
そして、名もなき男とニールの初対面のシーンで、なぜニールは名もなき男がアルコールを飲まないことを知っていたのか…
そこには作中で描かれないふたりの友情が存在しているという証です。
この作品は、友情の始まりの地点であり、友情の終わりの地点でもある作品なのです。名もなき男がこのあとどんな思いでニールと出会い、ミッションを託すか。そして、ニールはどんな思いで若いころの名もなき男とミッションをこなしていたのか。
そういったことに思いを馳せるのも素敵かもしれません。
【上級編】複雑な伏線・時系列を解釈して噛み砕く
これは、完全に考察マニアな方向けの楽しみ方ですね。ここまで、考察・解説しがいのある作品も中々ありませんよ。
ハリーはまだ鑑賞2回なので、細やかな考察はほかの方にお任せします。
そもそも”時間を逆行する”というアイデアが、伏線とその回収という点で素晴らしく効果的に機能しています。
まず、順行世界で理解できないイベントが発生する⇒そのあと逆行世界にはいることで、前半の順行世界で理解できなかった現象を逆から辿ることで状況が理解できるようになる。
順行世界の全てが逆行世界では伏線として機能してしまうという作りが見事過ぎて、前半の脳の混乱が後半に解消されていく気持ちよさがクセになるひとは少なくないはず。
さらには、複数の人物・組織が異なるタイミングで順行・逆行を行き来しているので、画面内の情報量がとんでもないことになっています。これを丁寧に解きほぐしていくいく感覚はほかの作品では中々味わえない感覚。
是非とも、可能なかぎり自力で理解できるところまで観返してほしい作品だと思いました。
タイトルの意味:TENET テネットとは?
https://ja.wikipedia.org/wiki/SATOR_AREPO_TENET_OPERA_ROTAS
ちなみに、タイトルである「TENET テネット」は、作中では名もなき男がスカウトされることになる第三次世界大戦を防ぐための秘密組織の名称ですが、元ネタはラテン語の有名な回文。
SATOR(武器商人セイター)
AREPO(贋作画家の名前)
TENET(謎の組織のキーワード)
OPERA(冒頭の爆破テロ現場)
ROTAS(空港のフリーポートの会社名)
どの単語も作中で使用されていますね。
さらには、最後のアルゴリズム回収ミッションでレッドチームが順行で10分(TEN)、ブルーチームが逆行で10分(TEN)のミッションをこなすところもTENETに掛かっていますね。
こういう細かい設定が数多く散りばめられているのがニクイですよね。
おわりに
今回は『TENET テネット』をネタバレありでレビューしました。
おもにテネットを楽しむためのポイントについてお話してきましたが、本作は音楽・映像ともに今の映画界では最高峰の迫力であることは間違いありません。是非とも劇場で見るべき作品です。できれば、IMAXやドルビーシネマなどの最高峰の環境で見ていただきたい。
それでは、次の作品でお会いしましょう。