どうも、こんにちは。
はりー(@hcinemadowntown)です。
今回は、映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』の感想です。
長い長い自粛期間がようやく終わりを迎えて、少しずつですが日常を取り戻そうと世間が動き始めましたね。
映画館も順次再開しはじめて、楽しみが戻ってきた感じです。個人的には本作が再開一発目の劇場鑑賞作品になりました。
結論から言うと、大満足の作品でした!!
監督のグレタ・ガーウィグと主演のシアーシャ・ローナンのコンビは前回タッグを組んだ『レディ・バード』でも抜群の相性だったので、期待はしていたんですけど、期待以上に出来の良い一作でした。
ということで、今回は絶賛気味の感想記事になります。
それでは、いきましょう。
本記事は本編のネタバレを含むので、ネタバレ苦手な方はご注意ください。
Contents
あらすじ
しっかり者の長女メグ(エマ・ワトソン)、アクティブな次女ジョー(シアーシャ・ローナン)、ピアニストの三女ベス(エリザ・スカンレン)、人懐っこくて頑固な四女エイミー(フローレンス・ピュー)、愛情に満ちた母親(ローラ・ダーン)らマーチ一家の中で、ジョーは女性というだけで仕事や人生を自由に選べないことに疑問を抱く。ジョーは幼なじみのローリー(ティモシー・シャラメ)からの求婚を断って、作家を目指す。
シネマトゥデイより
スタッフ・キャスト
グレタ・ガーウィグ監督
元々女優として活躍しいたが、2017年にシアーシャ・ローナン主演『レディ・バード』を監督。初の長編監督作でアカデミー賞監督賞・脚本賞にノミネートされる。
本作では作品賞にノミネートされて、今一番注目される監督のひとり。
ジョー・マーチ役:シアーシャ・ローナン
マーチ家の次女。作家志望。活発で自立心が強く、都会で小説家として活躍することを夢みている。
演じたのは、シアーシャ・ローナン。
アイルランド人で、若干26歳にして、アカデミー賞の主演女優賞に三度もノミネートされているという凄まじい女優さん。
監督とは『レディ・バード』以来2度目のタッグ。その他には、『ブルックリン』や『ラブリーボーン』などで高い評価を得ています。
本作の製作が始まる前に、話を聞きつけ監督に「わたしがジョーを演じる必要がある」と直談判したほどの熱の入れよう。
本作でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。
メグ・マーチ役:エマ・ワトソン
マーチ家の長女。面倒見がよく、女優の才能がありながらも、愛する人を見つけて結婚することが幸せと思っている。
演じたのは、エマ・ワトソン。
「ハリーポッター」シリーズでハーマイオニー役を演じて、一躍有名に。その後も『ウォール・フラワー』や『美女と野獣』などに出演。着実に女優としてのキャリアも重ねている。
彼女はアクティビスト・フェミニストとしても有名で、今回の起用も監督がエマの知性と発信力に共感したからとインタビューで語っています。
エイミー・マーチ役:フローレンス・ピュー
マーチ家の四女。いたずら好きで姉たちに甘えているが、芸術家志望で、情熱的な野心家の側面も。
演じたのは、フローレンス・ピュー。
イギリス映画「Lady Macbeth」で高い評価を受ける。19年は『ファイティング・ファミリー』『ミッド・サマー』と主演作が続く。
本作の演技でアカデミー賞助演女優賞にノミネート。
ベス・マーチ役:エリザ・スカンレン
マーチ家の三女。四姉妹の中で一番繊細で内向的。音楽への静かな情熱を持っている。
演じたのは、エリザ・スカンレン。
海外ドラマ「KIZU」での繊細な演技に、グレタ・ガーウィグ監督が目をつけて、起用された。
ローリー役:ティモシー・シャラメ
マーチ家のとなりの豪邸に住むローレンス家の孫息子。四姉妹と交流する中で、型にはまらない自由で意志の強いジョーに惹かれていく。
演じたのは、ティモシー・シャラメ。
主演した『君の名前で僕を呼んで』の演技が高く評価され、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされる。
容姿・演技の揃った新時代のイケメン俳優として注目されている。
FRONT ROWより
2度目の共演となるシアーシャとは、普段から仲が良い様子。アカデミー賞の授賞式でもふざけあっているふたりが目撃されていました。
『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』予告映像
ネタバレあり感想:人生に葛藤する人へのエール
世界的に愛されるルイーザ・メイ・オルコットの原作『若草物語(Little Women)』は幾度となく映像化されています。映画に限ってもなんと今回で9回目の映画化!
少女時代をまるごと回想にしてしまう大胆な脚色
今回、グレタ・ガーウィグ監督はかなり思い切った脚色をして原作を再構成してます。
冒頭、登場するのはNYの出版社で自分の作品を売り込んでいるジョー。いきなり青春時代をすっとばして大人時代から物語がスタート。
若草物語と言えば、”貧しくても心は豊かな”青春時代が印象的ですから、かなり大胆。
物語はNYで小説家として苦労するジョーが青春時代を懐かしむという形で進んでいきます。
しかも、編集長から”女性が主役の物語は最後に結婚しないと売れない”なんて言わせるあたり、監督は結構イジワルだなと。
いままさに、女性が主人公の作品を観てるんですが、こっちはw
こういう容赦ない宣言はドキっとさせられるんですが、監督の気概が見えてかなり好きです。
青春時代と大人時代の色彩豊かな対比
しかも本作の進行が時系列がかなり複雑。現在のジョーたち四姉妹のある出来事が描かれると、それに対比されるように青春時代の描写がカットインされる。
- 青春時代=夢
- 大人時代=現実
といった具合に、彼女たちが幼い頃に思い描いた夢と現実の大変さを私たちに見せつけてくることで人生の残酷な側面が浮かび上がってくるという仕掛け。
回想シーン、家族で披露する演劇の脚本を「シェイクスピアの再来ね!」と褒められたと思ったら、現実では「私はシェイクスピアにはなれないっ!」と絶望する。
幸せな結婚に憧れていた姉のメグも、現実では貧しい暮らしのストレスで使えもしない高級な布を衝動買いしてしまう。
描写がえぐすぎて、ライフが…持ちません…
暖かな暖炉の炎や豊かな草木、赤や緑を基調とした衣装と、暖色系まとめられている青春時代に対して、青を基調とした衣装の大人時代と視覚的にも両者にギャップがある事を見せつけてきます。
どれも、腹にずしんと来る描写が多いんですが、その分ひとつひとつのエピソードが深く目に焼き付きました。
四姉妹のそれぞれが、地に足の着いた人間味あふれる女性として描かれていて、だれしもが共感を持てる人物として豊かに描かれていて愛しくなってしまうんです。
「女の幸せが結婚だけだなんて絶対に間違っている…でも」
本作は結婚討論映画といって差し支えないほど、女性の結婚と幸せについて繰り返し語られます。
長女のメグは愛する人と結婚して家庭を築くことが幸せなんだと確信していますし、一方ジョーは結婚を自分を縛るわずらわしいものとしか思っていない。
強烈なのは「女は結婚してこそ幸せ」と言ってのけるマーチ伯母さん。もちろんジョーとは反りが合わない。そんな中、野心家で現実主義のエイミーは伯母さんの言葉を受けて、社交界でいい男を捕まえようと頑張ると。
ジョーは現代の価値観に通じる「性別だけで物事を見ない」女性なんですよね。いまよりも何倍も保守的な時代、その生き方を貫くのは相当な反発があったろうと思います。
そんな中ジョーが放った言葉がこの論争に一筋の光を当ててくれたように感じました。
「女の幸せが結婚だけだなんて絶対に間違っている…でも、どうしようもなく孤独なの」
結婚することにも葛藤と苦労はある。結婚しないことにも同じくらい葛藤と苦労がある。そんなことを気づかせてくれる胸に迫る言葉です。
この全く優しくない言葉が、だからこそ孤独を受け入れるジョーの強さを象徴するものですし、どちらの選択をする人にも背中を押す力があると思います。
ラスト…ジョーは結婚したのか?
結婚する/しないどちらも否定しないという作品のテーマが最も現れたのがラストの場面。
なんとラストの場面で、ジョーがNYで出会い意気投合したフレデリックと結婚したかどうかを観客に委ねてしまいます。
ジョーが去りゆくフレデリックに駆け寄ってキスをしたと思ったところで場面は冒頭の出版社のシーンへ。編集長に自伝的小説を売り込んでいる場面。
冒頭の”女性が主役の物語は最後に結婚しないと売れない”という編集長の言葉が繰り返され、ジョーは出版のために編集長の提案を渋々飲むと。
えっ?さっきの感動的なシーンは、現実なの?それとも書き直した小説のオチなの?
ジョーの結末をどちらともとれるようにしたことで、観客ひとりひとりが持つ価値観でジョーがどうなったか受け止め方が変わる気がします。
わたしは、このジョーは結局結婚しなかったんだろうなと思いました。アンタはどう思われましたかね?
原作者のオルコット自身が作中のジョーと同じように、オチを改変させられたというエピソードへの監督なりの回答にもなっているのが面白いところ。
おわりに
今回は『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』の感想をネタバレありで紹介しました。
原作は19世紀の物語でありながら、現代的な解釈を折りまぜ、普遍的なテーマ性の物語にアップデート。
色彩豊かで美しい美術と、四姉妹の誰にたいしても共感できる素晴らしい演技と、それを引き出した監督の演出力。
女性のみならず人生に悩む全ての人にオススメしたい傑作でした。
作品に関する撮影秘話やトリビアをまとめたのはこちら▼▼
それでは、また次の作品でお会いしましょう。