どうも、こんにちは。ハリー(@hcinemadowntown)です。
今回は映画『デッド・ドント・ダイ』の感想・講座の紹介です。
映画好きのなかでは知られているアメリカインデペンデント映画界の巨匠ジム・ジャームシュ監督がゾンビ映画を撮ったぞ!ということで界隈で話題になっている本作。
馴染みのキャストを揃え、お得意のオフビートな笑いとシュールな展開、強烈な社会風刺を織り交ぜた作品に仕上がっています。
本記事は本編のネタバレを含むので、ネタバレ苦手な方はご注意ください。
それでは、いきましょう。
- オフビートな絶妙に”外した”笑い
- メタネタ満載のセリフ回し
- ゾンビを通しての痛烈な社会風刺
Contents
あらすじ
ロバートソン署長(ビル・マーレイ)、ピーターソン巡査(アダム・ドライヴァー)、モリソン巡査(クロエ・セヴィニー)が見守るのどかな田舎町センターヴィルで、死者が墓場から次々とよみがえる。ゾンビは生前の活動に引き寄せられるように町をさまよい、時間を追うごとに増殖していた。三人の警察官や葬儀屋のゼルダ(ティルダ・スウィントン)、住民たちは、生き残りを懸けてゾンビの大群に立ち向かう。
https://www.cinematoday.jp/movie/T0024980
スタッフ・キャスト
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
『パーマネント・バケーション』で長編映画監督デビュー。
その後も、『ストレンジャー・サン・パラダイス』、『ミステリー・トレイン』、『コーヒー&シガレッツ』、『パターソン』など話題作を数々世に送り出しています。
本作でも監督の作家性がバリバリに出ており、独自の作品に仕上がっています。
- クリフ・ロバートソン:ビル・マーレイ
- ロニー・ピーターソン:アダム・ドライバー
- ゼルダ・ウィンストン:ティルダ・スウィントン
- ミンディ・モリソン:クロエ・セヴィニー
- フランク・ミラー:スティーブ・ブシェミ
- コーヒー・ゾンビ:イギー・ポップ
- ゾーイ:セレーナ・ゴメス
- 世捨て人ボブ:トム・ウェイツ
田舎町センターヴィルの警察署長を演じるビル・マーレイ。
『ゴーストバスターズ』シリーズの大ヒットで一躍有名に。東京を舞台にしたソフィア・コッポラ監督作『ロスト・イン・トランスレーション』ではゴールデングローブ賞で主演男優賞を獲得。
新作では『ゴーストバスターズ/アフターライフ』への出演は予定されている。
ジム・ジャームッシュ監督とは本作で4度目のタッグ。
センターヴィル署の巡査を演じるのはアダム・ドライバー。
『スターウォーズ』新三部作でカイロ・レンを演じて世界的な有名人に。
2019年『マリッジ・ストーリー』ではアカデミー賞主演男優賞にノミネートされる。
ジム・ジャームッシュ監督とは『パターソン』以来、2度目のタッグ。
謎の葬儀屋ゼルダを演じるのはティルダ・スウィントン。
『ナルニア国物語』、『ドクターストレンジ』などに出演。
ジム・ジャームッシュ監督とは4度目のタッグ。
![ハリー](https://cinema-town.com/wp-content/uploads/2020/01/mybest_capture_2020-01-26-10_34_57-1-e1580046341921.png)
金髪のストレートロングに道着きて刀を振り回すビジュアルは反則級です
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その他のキャストも スティーブ・ブシェミ、イギー・ポップ 、 トム・ウェイツといった お馴染みのメンツが揃っています。
さらに詳しい情報は公式サイトで!
『デッド・ドント・ダイ』感想:ネタバレあり
カントリー調のテーマ曲のとおりの緩い世界観
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![ハリー](https://cinema-town.com/wp-content/uploads/2020/01/mybest_capture_2020-01-26-10_34_57-1-e1580046341921.png)
実は、ジム・ジャームッシュ監督作は初鑑賞でした。
ジム・ジャームッシュ監督、独特でしたねぇ。
はじめて町でゾンビの犠牲者が出たシーンではなんともゆるーい天丼表現が。
クリフ、ロニー、ミンディに順番に現場に現れ、「野生動物か!?複数?」とおんなじセリフを吐いては、グロ死体を見てリアクションする。
普通なら初の犠牲者のシーンはセンセーショナルなBGMで盛り上げるところを、監督はしません。
普通ならこう来るだろうという展開を絶妙に外されながらも、なんとも続きが気になるストリーテリングは徐々にクセになる作風でした。
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![ハリー](https://cinema-town.com/wp-content/uploads/2020/01/mybest_capture_2020-01-26-10_34_57-1-e1580046341921.png)
このビル・マーレイとアダム・ドライバーの無表情演技がたまらない!
そして、本作はメタネタも満載。
冒頭、パトカーで巡回中、カーラジオから流れてくる曲は本作のテーマ曲「THE DEAD DON’T DIE」。
「この曲なんだっけ?」
「署長、スタージルの『THE DEAD DON’T DIE』ですよ」
「知らんなあ。でもなんか聴いたことあるんだよなぁ」
「ああ、テーマ曲だからですよ」
「テーマ曲?」
「そっす」
しれっと第四の壁を超えてくるロニー。
さらには、ロニーの車のカギにはスターデストロイヤー(※スターウォーズに登場する戦艦)が。
それを観たゼルダが「あら、スターウォーズなのね」なんて言って見せる。
こういったフフっと笑ってしまう場面の連続で物語は淡々と進んでいきます。
ゾンビは現代に生きるわたしたちの方かも
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本作はホラーではなくコメディと監督は公言しています。
しかし、しっかりと社会風刺を入れ込んでいるのが流石。
というのも、本作に登場するゾンビは生前執着していたものに死後も囚われて彷徨っています。
コーヒーを求めてダイナーに集まるゾンビ、スマホ掲げてWIFIを求めるゾンビ、”シャルドネ”、”シャルドネ”とつぶやく飲んだくれゾンビと、己の物欲に死後も支配される姿はなんとも滑稽。
ある意味ホラー以上にホラー。
【結末】最後に生き残れたのは…
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ロニーがたびたび「このままだとまずい結末になる」と口癖のように言っていたとおり、物語は悲劇的なエンディングに向かっていきます。
結局、最後に生き残ることが出来たのは、社会を拒絶した世捨て人のボブと、少年留置所にいた3人の少年少女だけでした。
物質世界への強烈な風刺を込めた本作において、世捨て人が生き延びるというのが、なんとも皮肉ですね。
ロニーのいう「まずい結末になる」というのも、我々今を生きる人々が生き方を改めないとよくない結果になるよと、暗示しているようです。
その一方で、これからの未来は生き残った子供たちの世代に希望が残されているというメッセージも同時にあるのが救いです。
おわりに
クセの強い役者を揃え、カントリー調のテーマ曲に沿ってひたすらに緩い笑いをかましてくる本作。
普段のゾンビ映画とは一味も二味も違う独自のポジションにある作品でした。
死んだように生きてちゃ、そんなのゾンビと同じだと監督に言われた気がします。
それでは、また次の作品でお会いしましょう。